06 — FACTORY JOURNAL
朝から道具の手入れ。
ものを作り始める前に、仕事を支える道具と向き合いました。
朝の工房は、まだ静かです。外から入る柔らかな光が工具棚の輪郭を少しずつ浮かび上がらせ、昨夜まで作業台に残っていた木の香りと、薄い油の匂いが混ざっています。機械の電源を入れる前に、まず向かうのは毎日使う道具のところです。
鉋とノミを一本ずつ取り出し、刃先を光へかざします。小さな欠けがないか。柄に緩みはないか。昨日の削り屑が隙間に残っていないか。目で見たあと、指先でも状態を確かめます。いつもと違う感触は、わずかでも見過ごしません。

布で汚れを落とし、金属の部分へ薄く油を差します。たくさん付ければよいわけではありません。必要な場所へ、必要な分だけ。布を折り返しながら何度も拭くと、鈍かった刃の表面に静かな光が戻ってきました。
長年使い続けた道具には、新品にはない手に馴染む感覚があります。柄には握る場所の色が残り、台には何度も調整した跡が刻まれています。その傷は古さではなく、これまでの仕事を覚えている印のようにも見えます。

手入れを終えた道具を元の場所へ戻し、作業台の上を整えます。今日使う木材と設計図、寸法を確かめるノギスを並べました。湯気の残るコーヒーを端に置くころ、工房の中にも少しずつ朝の音が増えていきます。
木を削る音も、金属を磨く音も、その道具たちがあってこそ生まれます。少しの手入れが、刃の進み方を変え、手に伝わる感触を変え、一日の仕事を支えてくれます。ものづくりは、素材へ刃を入れる瞬間から始まるのではありません。
道具を整え、机に余白をつくり、これから始まる仕事を思い描く。その準備も、私たちにとって大切な仕事です。今日も工房に灯りがともり、また新しいものづくりが始まります。